人で、無し
路上絵描きで、初めてお会いした方から「人は描かないのですか?」と 聞かれた。 うれしい質問。いきなり(私の)核心にスパッと。 本当に人は人が好き。飽きもせず人を描く。 画像や絵のサイトを開けば、 人、人、人、せいぜい骸骨、あるいは動物、または人形。 世の中の大勢が人を描き、人を見て、人を読み、人を聞いている ので私は「人」をいったん外に出して置くことにした。 いつか「モチーフとしての人間」というものについて客観的分析ができたなら、 カンバスにドーンと顔だけ、という絵を描くこともあるだろう。 今は 人間だけを描くという「安易さ」に、気持ちを譲れないでいる。 人間/構造物/自然物/宇宙/なんだかわからないもの‥‥ これらすべてを、等しく対等に扱いたい。 それが絵を描くことの正義というか真理というか、本当に面白いものをパッとつかむための 作法のようなものだと思うのだ。 その絵はだから、人で無し、何かではある と私は言う。 絵は 開かれ(花びらのように)そこに置かれ、育ち、 そして最後には(最後があるなら)目覚め、起きなくてはならない。