あなたの額(ひたい)が額(がく)

私は完成した絵は額に入れたいとは思わない。
額装は、絵を囲いこみ世界から孤立させる閉じた空間、あるいは演出・権威付け・誇示・主張・注視の発生装置。
私の絵は、宙に舞って空気に溶けていく、そのあやふやさの間へ投げ出しておきたい。意味と筆線が、ふわふわ浮遊しはじめる瞬間!‥‥それが「個展」の場であればなおよい。
そして絵は浮遊して、見る者の、あなたの、その額(ひたい)にバッと張りつく!
額(がく)はむしろ、描きかけの絵に使おう。ひと思いに描きたいのに中断せざるを得ない絵なら、それがどこかへ流れ去らぬように、しっかと額に納めておく。情緒的な時間よ止まれの用として。
※観覧者がみな、額(ひたい)に私の絵を貼りつけて漂っていくさまを、絵空に夢む。