ライブ絵描き 七つ道具

スケッチやメモ帳に 描く絵、ペン先は0.5ミリ。
では 
壁に貼った1,000ミリ(つまり1メーター)あまりの紙を
10メーター離れて見るなら、何ミリの太さで絵を描けばよい?

私の答は、筆。
それは「万能筆記具」です。考えてみてください。細い線から太い線まで描け、やわらかな曲線も自由自在。手首の回転にピタリと反応してくれます。カスレなどの効果も期待できます。
一方、極太サインペンはほとんどが四角い芯。曲線を均等幅で描くのはむずかしい。角をナイフで削って丸く‥‥してみたものの、うまくいきません。

結果、おなじみの筆ペン(太字)。墨にひたさねばならないという面倒もありません。
さらには、顔料インク。より黒く、濃く、うらに染みません。染料だと染みこむので、うら移りします。筆ペン太字 + 顔料インク。この組み合わせは、ライブ絵描きにはとてもよいと思いました。
つづきは「七つ道具」の残りについて。


2)紙。インクのノリがいいのはケント紙。 3)紙を貼るための「ひっつき虫」。はがしやすい。 4)地味な服。描いている絵より目立たないように。 5)手袋。手汗をかくので。 6)時計。きちんと時間内に仕上げたい。

最後は‥‥柔らかい体でしょうか。
なるべく絵を描く「手もと」を見せたいわけです。線ができていくところを。自分の体がじゃまになるので、横から斜めから下からクネクネ描きます。翌日はまるっと筋肉痛。それはもう透明人間なら苦労しません。

手もとが隠れて作業の様子がわかりにくくなったり、同じ線をずっとくり返したり、先行きがわかる絵を描いていると、お客さんは気が抜けてしまいます。そういうのは、描いている自分の背中に、客席から伝わってきます。インターネットの中継でさえ、感じることがあります。

ライブ絵描きは、発想を飛ばし、予想を裏切り、如意・不如意に、クネクネひょいひょいと見世なくてはなりませぬ。
(胡散くさい)「アート」とか「パフォーマンス」よ、さらば! 花やチョウや女の子やら、あるいは感情にまかせた抽象を描いて、絵の具を塗りたくってお客さんと興奮してうわー幸せだーありがとう!‥‥などというようなライブじゃなく。
私は スッと入って グッと抜ける、軽妙奇妙気ままそのままな「見世物」がしたいな。「スッと入って グッと抜ける」、これまさに「筆」の感覚。

‥‥と、話がつながったところで。
次回こそは「筆の身体感覚」のそれをひとくさり記事に。
長ったらしい記事、最後までおつき合いいただき感謝。