ジンジンとムジークの時間

トビラを開けると、もう一枚のトビラ。
二重の皮膜のむこうはもう音楽のマッス(固まり)。

(入り口はなんとステージの脇で、ギクリとした。いったん外に出る。
曲が終わるのを待って、こっそりと身をかがめ侵入。そんな始まりの夜。)

せまいカフェでのライブは、立ち見の盛況。
人々は木々、音楽は葉々、つまり箱庭の森。

2組目、ニュー東京スマアトボーラーズさんが音を鳴らす。
バイオリンにアコーディオン、フレンチな香り、だけじゃない。
陽気さの中に切なさの影。クラリネット、ギター、ベースも。
優しかったり頑固だったり、それぞれの主張をかき鳴らしていた。
私の頭の中のイメージはモナド。あと陽気な雨宿り。なんとなく。

3組目、Double Véさん。
がらっと空気が変わる。そこにあるボーカル 岳人さんの「我(が)」。
「暗い曲なんですけどどうしても歌いたいのでやります」。
この方の唄は、詩の朗読だなあと思う。ゴツゴツ、で繊細。
昭和の雰囲気、エレジーも。言葉を追いこんで追いこんで、削りこんでいく。

4組目、ストリングス倶楽部さん。反転して、根っから陽気。
酒を飲もう、陽気に歌おう。ブンチャッ、ブンチャッの2拍子が軽やか。
ハギさん(ギター)とココロさん(サックス)のソロに圧倒されるも、全体絶妙なバランス。
シナプスが指先にまで伸びてメンバー相互リンク、のような。
楽器の洗濯板をなでる指先を見てそう感じた(格好はトナカイさんの着ぐるみ)。

3階の窓ガラスは湯気でくもる。ロックがあっという間に水割りに変わる。
温度も湿度もタバコの紫雲もめいっぱいだ。
5組目のオランさんも「ここ空気うすいよー」。魔法瓶のお茶もさめやらぬまま、
最後の曲はすごい勢い・速いテンポで終わった。私だったら酸欠で倒れるにちがいない。
やっぱり歌う言葉がすごい。オランさんの歌は絵筆なのだと思う。
たねの歌も、君の靴音も、見えない物を描き出す。二重に描き出す。歌詞の中と現実と。

この夜も音楽から血を分けてもらった。新しい出会いに感謝します。