そもそもの奇人

奇人。
人のようでもあり、人でもなし。

あれは9月。旅先の福岡、駅ビルのハンズにて手帳を購入。
飛行機のシートに座るころには、ひとりめの奇人のイメージが頭上にフワフワ。
離陸するまでに奇人ふたり、さっと描き上げてしまった(【新聞男】【乗り物屋】)。
ついで、羽田に着くまでにもうひとり(【果樹園児】)。

旅のあいだ、私には仕事も本も携帯もネットもなく、日常がまっさらで。
何にもない空間には、だいたい何かがヒョッコリやってくるもので。
風向き上向きおあつらえ向き、同じギムナジウムのムジナな無地ページは
有意で優位、 you win な、誘淫剤。
それが「描きたい気持ち」と交わる接点、ポトンと落ちてはワクワクと湧(わ)く。
一冊の無地ノート、一本のペン、が 奇人生成マシーンと化した。

1ヶ月描けば30人、これで一冊。そう目論(もくろ)んで描きつづけ。
それでできたのが電子ブックの『奇人圖譜』(きじんずふ)。
数寄者/好奇者/崇綺者さんたちの、ありがたいお声がけをいただきながら、
結果51人まで描き加えてできあがり。10月末のうすぼらけ。

9月。
あのときの飛行機雲で、空にも絵を描けていただろうか。