ヨコヨコ・タテタテ

横尾忠則さんの公開制作である。
ひろい真っ白な部屋、壁にカンパスが立ててある。私は1時間以上遅刻するも、横尾さんはイスに座ってのんびりおしゃべり。どうやら質疑応答タイムのようだ。
初めてご本人を見るけど‥‥飾り気も虚栄も緊張もなし。ジーンズに黒いナイキ。「ほんと言うと、描きたくないんでしゃべってるんです」おー そうだよ そういうものだよ、と私は うれしくなる。
この日は2日目なので、カンバスにはひととおり色が入っている。お客「それはどこのY字路なんですか?」そうか、あれ、路地の絵なんだ(黒っぽくてわかりにくい)
「どこだったかな。北区?北区です。えーと北のほうにある町ですね。あ、ちがうよ。これじゃなくて。こっちだ、文京区。これ2つ、まじってます。まぜて描いてます。だから北文京区」‥‥おもしろい 横尾さん。

今回の絵について。
真っ暗闇の絵、どんどん暗くしていって、さて何が残るか?
ご自分のアトリエにはネコが4匹。電気を消すと本当に漆黒の闇、の、中で、走りまわって遊ぶネコ。「何か、ちゃんと見えてるんですね。どんなふうに見えるのか。だから、僕がなりたいのはネコなんです」いいな、ネコ。
さて、いよいよ制作の開始だ。ヨコヨコ・タテタテ・ヨコ・タテタテ、筆のおしりを持ち、小さな十字で塗っていく。1時間、もう一言もなく集中。画家が闇を塗っていく、そのために一体どれだけの筆をかさねるというのだろう。
‥‥なぜか絵の黒さをさほど感じなくなっていく。暗闇と同じ。「目がなれる」のだろう。じっと見続けていると、細かいところの違いが浮き出てくる。不思議。
突然、白い色が登場。左上には「450」の文字が入る。何だろう?(今日はその謎は解けなかった。最後にはわかる、とおっしゃっていた。)アクセントのように白が入って、絵全体がざわめく。つづいて明るい茶色、も来た。
私は思う。
闇を際立たせるためには、コントラストが必要なんじゃないのかな。今日最後に明るい色が来た、そんなふうにして。でも横尾さんは、この先この絵をどうするのだろう。このまま闇こってりの彼方に向かって、沈んでいくのか。
「僕の絵は、具象のようだけどそうじゃない。抽象と具象、その中間。あいだを、さまよっているんです」
今週は、12/22(木)、23(金)にまた描くそうです。
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kokai/kokaiitiran/yokootadanori/index.html